2018年4月3日火曜日

2050年エネルギーシナリオの論点

新年度に入りました。
エネルギー需要開発協同組合と致しましても新たな気持ちで家庭用エネルギーリテール業界のご発展のために微力ながら尽くして参りたいと思います。
改めまして、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 
さて、2002年に制定された「エネルギー政策基本法」では3年ごとに我が国のエネルギー基本計画を策定することになっており、現在のものが2014年に2030年までを対象に策定されてから3年が経ち、計画の見直しが総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で行われております。

これと並行的に、パリ協定の2050年時点で温室効果ガスを80%削減するという我が国の目標達成の困難さを踏まえ、経済産業大臣主催の「エネルギー情勢懇談会」が昨年8月に設置され、2050年のエネルギーシナリオの議論が開始されました。先月、3月30日に発表された同懇談会の論点整理に触れてみたいと思います。

論点は4つあり、論点1では、技術革新が脱炭素化の可能性を増大させることを認めつつも、技術・国家・産業間の競争激化や新興国の台頭による地政学的リスクの増大等不確実性が高まることを踏まえた国家戦略が必須になろう、としています。

論点2では、エネルギー基本計画の2030年シナリオと違い、可能性と不確実性に着目して多様性を加味した、しなやかな複線シナリオとするべきと。

論点3では、電力システムのゼロエミ化、熱システムの電化・水素化、輸送システムの電動化、分散型・次世代省エネ化のエコシステム形成、海外脱炭素化貢献といった野心的取り組みが必要であろうと。

そして論点4では、2050年シナリオ実現に向けて安全の革新、エネルギー安全保障、技術革新・競争力強化による経済性向上を同時達成すべく総力戦対応が不可欠であろうと結んでいます。


私は、同懇談会の枝廣委員(東京都市大学環境学部教授)から提出された参考資料に興味を惹かれました。

福島原発事故を踏まえ2050年には原発依存度ゼロ、他国がどうであれ日本が現実的な原発のたたみ方を考えるべし、とあります。

その理由として、経済性の悪さと日本固有の大地震発生リスクを指摘、原発依存度を15~20%と置けば40年廃炉を前提として新増設が必要な原発の数は、2030年までに2~9基、2050年までに20~27基、2100年までに40~54基と指摘し、その必要性を問いかけて(不要性を訴えて)います。


エネルギー情勢懇談会の論点整理は2050年までに日本で起こり得る多様な選択肢に応じた複線シナリオに基いて野心的ビジョンを定めるよう提言するとのことですが、そこでは枝廣委員の指摘する巨大地震発生リスクは特筆・強調されていません。

一方で内閣府の中央防災会議では2012年時点で30年以内に発生する大規模地震の確率として首都直下地震70%、東海地震88%、東南海地震70%、南海地震60%としており、またこれらが連動して起きる可能性を指摘しています。

2050年に向けてこれらの確率はもっと高くなっていく、という大前提に立った提案を懇談会には期待したいところですが、そうではなくて、パリ協定の2050年温暖化効果ガス80%削減目標は大変厳しく、その達成のためには一定の原発が必要不可欠で、そのための安全審査・対策をしっかりと講じるべし、という提案になるとすれば、そもそも順番が逆のように思うのは私だけでしょうか?

今春のエネルギー情勢懇談会の最終提言を待ちたいと思います。